当時の日本を見たヨーロッパ人の言葉の引用を軸に、昔の日本の様子を見つめる本。日本に昔はあって今は喪われたものについて思いを馳せることができる良書である。
一般に書物を残したヨーロッパ人の日本観察はつぶさであり、言葉は明晰で、当時の状況を客観的にみつめる多くのヒントを与えてくれる。
一方で、次のヒュースケンの言葉のように、日本に対して感傷的な気持ちのこもった言葉もある。
いまや私がいとおしさを覚えはじめている国よ。この進歩はほんとうにお前のための文明なのか。この国の人々の質樸な習俗とともに、その飾りけのなさを私は賛美する。この国土のゆたかさを見、いたるところに満ちている子供たちの愉しい笑声を聞き、そしてどこにも悲惨なものを見いだすことができなかった私は、おお、神よ、この幸福な情景がいまや終わりを迎えようとしており、西洋の人々が彼らの重大な悪徳をもちこもうとしているように思われてならない。
自分たちの文明を導入することを躊躇させるほど、「よいと思わせる」ものが日本にあったということである。いった日本とはどんな国だったのか。そのヒントが本書には詰まっている。
あれから150年。さて私たちは「重大な悪徳」の中にいるのだろうか?