あのときの王子くん~星の王子さま~ 掲載にあたって

 ここに掲載するのは、Antoine de Saint-Exupery (1943) “Le Petit Prince”の、大久保ゆう氏による翻訳、『あのときの王子くん』――一般的には『星の王子さま』との題で知られる本の別訳――を、大人でも読みやすいように編集したものです(kindleで読める本としてもまとめました)。

[サン=テグジュペリ, AA翻訳情報局, 大久保ゆう]のあのときの王子くん: 星の王子さま
kindle版

 このような編集が可能なのは、感謝すべきことに大久保氏は自身の翻訳を、「クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンス(CC BY 2.1 JP)」によって公開しているためです。この表示は、利用者が、各種メディアやフォーマットで複製したり再配布することや、営利目的も含めリミックスしたり改変したり別の作品のベースにしたりすることを、クレジット表記などを含む一定の条件で許容するものです。

 大久保氏の訳は、そのあとがきにも記されているように、朗読での使用を主な狙いとし、また子供でも読めるように工夫されている大変小気味良い翻訳です。一方で、漢字の世界に慣れた大人たちには多少アクセスしにくい雰囲気があります。このサイトはそのギャップを埋めるべく、大久保氏訳をベースに、大人でも読みやすいように作成しました。大久保氏にはこの場を借りて御礼申し上げます。

 なお、大久保氏訳からの主な変更点は以下のとおりです。

  • 漢字を増やす。
  • 読点やルビを編者独自に整序。
  • 閉じカッコ直前の句点を削除。
  • 一部の擬音のカタカナ化。
  • 約十ヶ所において、言葉を変更・追加(主に意味の明晰化のため)。
  • 最も流布している内藤あろう氏訳のタイトルを、サブタイトルとして併記。

 このサイトを通じて、子供たちだけでなく大人たちにも、大久保ゆう氏の心躍る翻訳に触れる機会が増えることを願ってやみません。


大久保ゆう氏は翻訳の実践化であるばかりでなく、翻訳という行為を学術的にも深く追究されている意欲的な翻訳家・研究者です。

訳者
大久保ゆう
翻訳研究者、翻訳家、講師。京都大学総合人間学部卒業、同大学院人間・環境学研究科 博士(人間・環境学)。ラリー・ブルックス『物語を書く人のための推敲入門』(二〇一九)、ゴットフリード・バメス『定本 基本の動物デッサン』(二〇一八)、スコット・L・モンゴメリ『翻訳のダイナミズム――時代と文化を貫く知の運動』(二〇一六)など、多数の訳書がある。他、翻訳にまつわる論考を雑誌『ユリイカ』(青土社)などに精力的に執筆し続けている。