アメリカナイゼーション ――静かに進行するアメリカの文化支配

アメリカナイゼーション ――静かに進行するアメリカの文化支配

アメリカナイゼーション ――静かに進行するアメリカの文化支配

多くの寄稿にもとづく論集。啓発的な論文としては、とくに伊藤陽一氏の「「個人主義」や「民主主義」はアメリカナイゼーションなのか?」という論文が挙げられる。

それによれば、アメリカとの相似という結果だけをみて「アメリカナイゼーション」と呼ぶのはふさわしくない。結果としてアメリカに似ていても、すぐにアメリカの影響とはいえず、必然的結果として相似しているにすぎない場合があるということだ。

「農業、工業などの基幹生産技術、情報関連技術等、特定の技術はすべての人間社会を、好むと好まざるとにかかわらず、特定の似たような方向に変える傾向がある」

(p.64)

その例として「 個人主義」や「民主主義」が挙げられている。

伊藤氏の論が示唆するのは、アメリカナイゼーションの内実は、実はかなり限定された内容なのかもしれないということである。たしかにハリウッド、マック、コーラなどの、世界への浸透はどうみてもアメリカナイゼーションだし、極端な市場主義などもアメリカナイゼーションとしての側面は否めないかもしれないが、アメリカにあるものが、遅れて日本にあるようになった場合、それをすぐにアメリカナイゼーションの結果であるとみなす考え方に抑制をかけてくれる論となっている。