反米主義 (講談社現代新書) 近藤 健

反米主義 (講談社現代新書)

反米主義とは何か?

著者によれば、反アメリカ文化流入よりむしろ、反アメリカ的資本主義こそが、「主義」に値する反米である。この規定を前提に著者は、

反米主義の内実は、資本主義システムのなかで大量消費文化の性質である浪費と破壊と格差をいかに抑制するかという望ましい資本主義をめぐる自分探しである。

(p.13)

と重要な指摘をしている。

アメリカ的な資本主義の原理で動いていている国は、資本主義の恩恵を享受していると同時に、数々の矛盾をかかえてしまった。資本主義はそういうすべての国にとっての問題というわけだ。反米は、資本主義のよりよい形を探ろうとする気持ちの裏返しということだ。

反米主義 (講談社現代新書)  近藤 健

アメリカ型の大量生産大量消費主義へのアンチテーゼとして、清貧やロハス、スローライフなどに傾いた考え方が提唱されることがあるが、著者はこういう思想を説いたり実践できるものは、

相当程度の所得があって大量消費生活の恩恵を味わってきたものが多く、余裕からの反省の弁である側面が色濃い。貧困者や所得格差に悩む人びとからは発信されていないし、アジア・アフリカや中南米の貧困者にそれを説くことができるのだろうか。

(p.92)

と、その欺瞞性を指摘。そこで

欲望を封じ込めずに、その自由の暴走をいかに制御するか

(p.93)

という問題が、倫理的課題となることを指摘している。

事実羅列や引用部分も多くて少々読みにくかったが、反米が、批判する側される側という区分を超えた課題を示していることに、気づかせてくれる本である。