コモリくん、ニホン語に出会う (角川文庫)小森 陽一

コモリくん、ニホン語に出会う (角川文庫)

帰国子女という言葉すらなかった頃、コモリくんはクラスで浮いていました。
両親の仕事の都合によって、チェコのプラハで幼少期を過ごしていたコモリくんは、日本に帰国してから、日本語をいちから覚え直していくことになります。

一生懸命、日本語を学んで、おかしくないように話しているはずなのに、コモリくんが話すたびにクラスメイトに笑われます。

「ミナサン、ミナサンハ、ボクノニホンゴノ、ナニガイッタイ、オカシイノデショウカ?」

帰国子女・コモリ君は、文章語で話す小学生でした。そのため、周りからはおかしな子と思われてしまっていたのです。

日本社会の異分子として日本語に出会い、格闘したコモリくんは、『吾輩は猫である』の猫に感情移入して読書感想文を書きあげますが、先生に誤読と言われてしまいます。

さらに、高校で書いた『こころ』の読書レポートでは、Kと先生の奥さんがその後どうなったかを想像し、力を入れて書くも、学校の評価は散々で、気になっていた女の子にも「小森くんて、センスないのネ」と言われ……。

そんなコモリくんが学生運動を経て、深く日本文学を愛し、海外でも日本語を教える側になり、文学研究の第一人者となり、日本語と格闘し続けた記録です。

大学の先生になってから、小学校・中学校・高校で出張授業をして、日本語の可能性・言葉の面白さを生徒と一緒に体感した記録も収録しています。

Amazon.co.jp内容紹介(改行補正あり。強調引用者)

コモリくん、ニホン語に出会う (角川文庫)小森 陽一

小森氏はもともと歴史学を志していたそうだ。だが力不足でしかたなしに国文に入ったという。それがふわふわと東大のセンセイにまでたどり着いちゃうんだからすごい。

ロシア語ができ、卒論では二葉亭四迷のツルゲーネフ翻訳を追った。翻訳時に語順までもロシア語的に訳そうとしていたことに驚いたそうだ。

上記引用にあるように、子供時代のエピソードなどかなり特異なもので興味深い。私は何も知らずに帯にひかれて読んだ口だが、著者のファンは是非読むといいだろう。

解説は名著『日本語が亡びるとき』の著者、水村美苗氏。