小説パガニーニ フランツ・ファルガ

原著者フランツ・ファルガの作品として他に『ヴァイオリンの名器』という訳書があって、これを読んだことがあるが、それを書いた人が小説? とちょっと不審に思っていた。読んでみると内容は小説ではなく、丁寧に調べられたふつうのノンフィクションだった。

小説パガニーニ

原題はPaganini : Der Roman seines Lebens だが、内容から考えて「小説」という題はミスリーディングであり、「物語」のほうがふさわしい。全体として『パガニーニ伝』くらいにとらえておいて何ら問題ない。

パガニーニ自身の残した手紙や、間近で見た人の証言が生々しくて、パガニーニが読者にとって近いものとなること請け合いである。

訳は多少翻訳調であるが、読みにくいほどではない。いま再販されたとしても問題なく通用するだろう。

最近では 悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト パガニーニ伝 (新潮新書) がパガニーニを知る上で手頃だが、『小説パガニーニ』 も、彼の人生を知るにあたって一度は読んでおくべき基本書と言える。

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パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト(字幕版)2014

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