気功の実効を著者自らの治療例で証明する本。本書の本筋ではないが、気の実在について考えさせられた。謎も多いが、実効から始まる議論は強力だ。
著者によれば、気は「良い気」「悪い気」として存在する。気は治療の場面のみならず生活空間にも存在し、「良い気」をとりこむ生活を送ると健康でいられるとする。実践者として実績を持つものの言葉だけに、「気など妄想」と一蹴する気にはなれない。
だが理解不可能な点も多い。「良い気」「悪い気」が仮に実在するとして、それが健康面に影響を及ぼすという考えは無理がないように思う。
だが「悪い気」が事故などの「悪い事実」を引き起こすとする考えは、気の実在を承認した上でも理解できない。気は「情報」であり、電話でも治療できるとも著者はいい、実際にそうしているという。この場合も、たとえ実効があっても、「気=情報」という等号の意味は、常人には理解不能である。
言語化困難なのかもしれないが、ここで丁寧な解説を怠れば「気」は異端視され続けるであろう(1) 「秘伝」として、実践者希少のほうが儲かるから、故意に曖昧にしているのだろうか。 。
奇妙な側面はさらに検討を要するにせよ、「気の実効」から出発する議論は、やはり強力であり、これを頭から無視するのは科学の怠慢であろう。偏見と戦いながら気の研究を続ける人たちにはエールを送りたい。
脚注
↑1 | 「秘伝」として、実践者希少のほうが儲かるから、故意に曖昧にしているのだろうか。 |
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