科学者がいわゆる疑似科学を批判するとき、はじめからそれがエセであると決め付けて嘲笑することも多く、公平さを欠く傾向がある。
だが、科学哲学者たる著者はそうした態度を決してとらず、時には非常に遠回りをしながら、科学と擬似科学を分けるものを徹底的に問い詰めていく(文は時々おちゃらけているがご愛嬌)。
題材として、創造科学(聖書記述を事実とし進化論を否定する立場)・占星術・超能力・代替医療などを取り上げているが、著者は無根拠の断定をひとつもせず、丁寧にそれらを検討している(1)「この議論のまますすむと、もしかしたら疑似科学も科学の範疇なのか?」と読者をしばしワクワクさせるようなところさえある。。著者の態度には、疑似科学への闇雲な批判者が見習うべき誠実さがある。
結論として、疑似科学と科学をはっきり区別するラインはないが、複数の判定基準による総合評価で、両者は区別できるというのが著者の立場だ。
なお、疑似科学であっても、科学並の緻密さや環境で研究されているものがあるそうだ。であるなら少なくとも研究方法としては科学と呼ばれる資格は備えている(ここも参照)。例えば超心理学(ESPなど)は米国では極めて公式に研究されているという。
今のところ結果に再現性がなくても、研究して無駄な分野ではないだろう。ファイヤアーベントではないが、現在非合理とされるものでも、それを研究した結果、何か今の枠にはまらない新たな知見が得られるかもしれないのだから。
脚注
↑1 | 「この議論のまますすむと、もしかしたら疑似科学も科学の範疇なのか?」と読者をしばしワクワクさせるようなところさえある。 |
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