スピリチュアルの流行の本質(の一端)を喝破している本。
本書から拾える限り、スピリチュアルの特徴は、
- 出世、金銭面での成功、恋愛の成就などの現世的な利益を意識した明るいもの (旧来のスピリチュアリズムは暗く世間離れ)
- 他者はさておき、自分だけが救われればよい(利他的行為・社会全体の幸福・自己規律を要求する宗教一般とも違う)
スピリチュアルにハマる人、ハマらない人 (幻冬舎新書) 香山 リカ
つまり精神的・超越的な仮面をかぶっていはいるが、現世での、それも自分だけの幸せを志向する傾向が強いのがスピリチュアルだと著者は言うのだ。そしてそれは、人生の意味がわからなくなり、さりとてつらい修養もできない人たちの受け皿となる。自責がちの彼らの心は、超越的な立場から肯定してくれる言葉により、回りくどいカウンセラーによるよりも手っ取り早く癒される。
この状況について著者は、彼らが真実をみていない(彼らには真偽より希望が持てるかが重要)、また利己主義的すぎると批判し、自分は入っていけないと総括する。スピリチュアルにはまる人とはまらない人との差がどこにあるのかという考察は特になかったのは残念だが、スピリチュアルの基本的特徴を知るのにはよい本だと思う。
ただしこの著者は、(毎度思うが)文章の工夫を放棄しがち。売り物なんだからもう少し力を注いでほしい。