国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫) 河治 和香

国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫)

ありとあらゆる贅沢を禁じた天保の改革。独創的な絵師、歌川国芳一派も、使用する色数を制限を受けたり、絵を描く機会を奪われたりして商売あがったりだが、これをあの手この手で切り抜けていく。そんな様子を国芳の娘、登鯉(とり)の目から活写した秀作だ。

国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫) 河治 和香

歌川国芳作『相馬の古内裏』
(1845-1846頃)

話がどんどん進展する小説ではない。しかし、確実な時代考証、実際こういうふうだったと確信させるほどリアリティのある江戸弁、抜け目ない歌川国貞の生き様との違いの際出せ方、生首・刺青・千社札などといった道具立ての使い方のうまさ、これらによってこの小説世界それ自体が「絵」のようで魅力的な本となっている。著者こそが絵師ではないか。

若干伏線の張り方につまずきがみられるが、この時代の奉行、遠山の金さんとの絡みなどもあって楽しく読める。おすすめ。

国芳シリーズは5作で完結。どの巻もまずもって表紙が印象的だ。