電波男 本田 透

電波男

文章も用語も型破りで楽しく読めるが、内容は著者の実存をかけたもので、思想性にあふれている。

著者は現代の恋愛が、金銭ずく顔面ずくで愛のない「恋愛資本主義(1)こちらの2段落目がわかりやすい。」に毒されているとし、そのアンチテーゼとして萌え(=脳内恋愛の運動)を提唱する(2)基本的にはその対象は美少女キャラであるが、必ずしもそれに限定されない。 。これからの時代、心あるものは萌えを志向すると著者は言う。著者自身が恋愛資本主義内部では受け入れられたことがないという悲しい体験が議論の根底にある。渇愛する者には、必然的に要請される心の運き(のひとつ)ではありうる。

電波男 本田 透

萌えの効用として、鬼畜化の回避をあげている。鬼畜化とは恋愛資本主義への報復行動のこと。前に秋葉原でおきたの無差別殺人も鬼畜化の例であろう。著者は萌えがあるから鬼畜にならずにすんでいると自己分析しているほど、萌えには「実効」があるという。

本書が偉大なのは、著者が恋愛資本主義批判を、身を削りながら書き尽くしたところにある。本文もすばらしいが、ぜひ読んでほしいのは「あとがき」だ。私はこれほど感動的な「あとがき」を読んだことがない。

萌えの体系という自分の思想枠内で、漫画・映画・ゲームなど様々な事象を鮮やかに説明しているのにも舌を巻く。


脚注

脚注
1 こちらの2段落目がわかりやすい。
2 基本的にはその対象は美少女キャラであるが、必ずしもそれに限定されない。