プロパガンダ株式会社 アメリカ文化の広告代理店 ナンシー スノー

プロパガンダ株式会社 アメリカ文化の広告代理店

アメリカは民主主義を喧伝しながらも、他国の民主主義をつぶす欺瞞を行っている。本書で著者はアメリカのこうした欺瞞を、「対外宣伝」という角度からみて厳しく批判する。

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著者はクリントン政権時代に合衆国情報庁(USIA、現在は国務省に統合) に二年間つとめたという。

同庁は本来、諸外国との相互理解などを目的としていたが、著者の経験から実際そこはアメリカの対外プロパガンダ機関にほかならなかった。そうわかって著者は同庁でのキャリアを降りたという。

同庁は、冷戦時代には反共をテコにし、世界中にアメリカ流の市場主義、民主主義を喧伝した。冷戦後は、米国企業の営利事業への支援に軸足を移した。

どちらにしても自国の利益のために、帝国主義的な側面を粉飾しつつ、好ましい米国観を製造、輸出してきたというわけだ。

チョムスキーらのアメリカ批判に触れた事のある人にはお馴染みであるが、 アメリカが行っている他国への介入(チリ、グアテマラ、インドネシア、モザンビークなどへの介入)は、例外なくその国の貧困層を犠牲にしている一方、富裕層や有力者の便宜を図るものである。

アメリカが行っていることは民主主義を高らかにうたい上げながらも、民主主義をつぶす類の欺瞞なのだ。アメリカならさもありなんという気もするし、驚きはあまりなかったが、本書は、やれやれなアメリカの現実を別視点から見るのに良い本だと思う。