わかりやすい論文・レポートの書き方―テーマ設定から・情報収集・構成・執筆まで  安藤喜久雄 編

わかりやすい論文・レポートの書き方―テーマ設定から・情報収集・構成・執筆まで

注目度は低いが良書。「第2章 問題の探求」(江上渉氏執筆)の内容が面白い上、役に立つ。また「第4章 整理の方法」(川本勝氏執筆)も緻密なところをついていて参考になる。他の章もよかったがここではこの2つについてだけ覚書を。

わかりやすい論文・レポートの書き方―テーマ設定から・情報収集・構成・執筆まで

問題の探求

問いを探すにあたっては、生活の中での観察を鋭くし、自分が興味を持てるテーマ(見栄を張らないテーマ)を設定することが重要である。問いを立てるにあたっては、

  • どうなっているか(事実関係の把握)
  • なぜそうなるのか(その事実の要因)

にわけるとよい。事実を正しく把握できれば、要因への問いが自然にわいてくる。するとさらに新たに別の事実関係をチェックする必要が出て、さらにその要因を突き詰めることになるから、問いというものは必然的に深まっていく。

事象の要因追求に当たってはまずは仮説を立てよう。その際、常識で因果関係があるとされていることには疑いの目をもつこと。特に、わかったつもりで何となく使っている概念については、再定義の必要がある。

「タッチパッドが使いこなせないハリネズミ」

整理の方法

問題解決の流れは、問い→問題提起→解決方法の発見→解答(結論)。問いに対してどういう方法をとれば一番適切な解になるのかを考える。

事象に対する各種要因のあいだの役割関係(因果関係、相関関係等) を見抜くことが大事である。要因間の関係を図式化できるくらいに把握する。

測定できない構成的概念は操作的概念に引き戻して測定する(たとえば「社会的地位」を、「学歴」「職業」に還元する等)。


本書は5人の著者の分担執筆。全体の内容は次のようなものだ。

第1章 実践的レポート作成法(テーマが与えられた場合のレポート作成法)
第2章 問題の探求(上述)
第3章 情報収集の方法(資料や検索場所、検索方法などを具体的にあげている)
第4章 整理の方法(上述)
第5章 論文・レポート執筆の作法(論文の形式面での注意事項を説明)