若年社員の下働きが、中高年社員の懐を肥やす年功序列システム。将来自分が貢がれる側に立てるかもしれないという見込みがあってこそ、下積み的な仕事でも若者はがんばってこれたが、いまやこの年功序列の安定的なレールは崩壊しており、レールを前提に生きるという甘い見込みは通用しなくなっている。
「このままじゃ下積みばかりで、すでに長年いるジジイばかりが得をして、オレはずっと割を食うばかりだ!」
この前途不明感が若者の早期退職を引き起こしている、と著者は言う。
「やめてはもったいない」場所に勤めている上場企業社員だけが想定読者という臭みは拭えないし、他にも早期退職の理由は様々あるだろう (1)仕事上のストレス、労働時間の長さ、厳しいノルマ、仕事が退屈、人間関係がよくない、社風があわない、相談できる人がいない等、基本的に消極的な理由であるが、キャリアアップのためという積極的な退職も当然ある。(ここ参照)が、著者の指摘に真実が含まれるのは間違いない。
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書) 城 繁幸
読んでいると暗くなるほど悲観的な論調だが、その中で、レールによらないで自分の人生を自ら形作っていくことこそがやはり大事なのだという著者のエールは、ありがちな意見とはいえ、悲観の中のオアシスに見える。勇気づけられる人も多いだろう。
世を恨むより己を見つめよといったところだろうか。