文明の生態史観 (中公文庫) 梅棹 忠夫

文明の生態史観 (中公文庫)

世界を半分に分けるとすると、東洋と西洋と分けるのが普通だろう。ところが本書の著者は、これを覆すような驚きの世界像を読者に示す。

著者は東洋・西洋という区分の変わりに、

  • 第一地域(西欧と日本)
  • 第二地域(その他の地域)

という区分を提唱する。この区分の根底にあるのは、現在(1957年)、高度な文明を持つのは西欧と日本しかないという事実への認識である。

文明の生態史観 (中公文庫) 梅棹 忠夫

これを基礎として、第二地域で高度な文明が未発達な理由や、第一地域と第二地域の根本的な差異を問い、その答えを、封建制の発達度合いなどの社会構造の違いや、地域環境的条件の違いなどに求めていく。

地球儀

アウトラインでしかないと著者も認めているとおり、弱い具体例から主観論で筆を滑らせがちだが、当時多くの議論を呼んだそうで、斬新な世界像だったことが伺われる。

著者のこうした世界区別の妥当性について口を挟む立場ではないが、一読して明らかなのは、対象へのアプローチ方法がふつうの学者とは違って極めて大胆だということ。各種資料はあくまで「従」で、まずは自分の頭でモデルを構築し、それを「主」としている。

世界は補助線の引き方によって様々な見方ができるということを再認識させてくれるうえ、対象への迫り方についても参考になる本である。ひらがなが多いし、中学生でも抵抗なく読めるかもしれない。